2010/09/29

ユーラシア大陸の旅 #14 皆既日食 <前半>

これまでの話しは『ユーラシア大陸の旅』をどうぞ。

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この日食のツアーには、ロシア人の他に、40代くらいのオランダ人の夫婦と50代か60代のフィンランド人夫婦2組が参加していた。私を含めて外人たちはみんな皆既日食を見たことある日食経験者。そして、外人以外のロシア人は、誰も日食をみたことのない日食未経験者。

ロシア人たちは、たまたまトレッキングのツアーで日食が見れるという程度の知識や興味しかなく、外人たちはとにかく日食をみるためにロシアまでやってきた人たち。それくらい、皆既日食は一度みると誰もをとりこする。日食であればよいというのではなく、月と太陽が完全に重なる「皆既日食」じゃないと意味がない。そして、その皆既になっている時間が長ければ長い程いい。

皆既日食か部分日食の99%かの違いはちょっとの違いに感じるかもしれないけど、例えていうと数秒の差でオリンピックのメダルをとるか4位かというくらい違う。そして、皆既日食の「皆既」の時間が長い方がいいというのを例えるのなら、メダルの色がゴールドかブロンズかという感じ。

この時間というのは、微妙なもので、同じ日の皆既日食でも見る場所によって、皆既の時間が違う。詳しい説明はおいておいて、日の出から日没までの間で、一番時間が長いのが、真昼。さらに、その真昼でも、太陽と月が重なるセンターラインに一番近い地点が一番長く見られる。2009年の日本での皆既日食で説明すると、皆既になるぎりぎりの場所である奄美では3分ほどしか皆既ではないけど、センターラインに近い悪石島だと6分半くらい太陽が月に隠れる。同じ時間帯でも、それくらい場所で違うのだ。

もうひとつ、日食をみるときの条件。日食は360度開けている場所で見た方がいい。ビルの隙間からちらりと見える空ではなく、障害物が何もない野原のようなところの方がいい。日食は太陽と月が重なってできるリングが見えればよいのではなく、空全体を楽しむものだと思う。大きな空の地平線全部が夕焼けになり、真上だけが夜空。つまり、大きな月の影が昼間の空に夜空を作るのである。空が全部見えないと、そのスケールの大きさは感じれない。

まとめると、皆既日食を見れるところで、見れる限り長く見れる場所を選び、視界のよい場所で見る。これは、日食経験者にとって、当たり前のことである。そして、オランダ人とフィンランド人と日本人は、このトレッキングツアーは日食を見るツアーだから、日食を見る条件くらいわかって、見る場所を考えている、と信じていた。

が、

日食の数日前になって、日食をどこで見るのかとか、日食当日のスケジュールはどういう風になっているのかを確認すると、ガイドは日食の詳しい時間を知らないという。さらに、山に囲まれている谷で見ようと考えていることもわかった。私たち外人(日食バカ)チームは、みんなでとにかくガイドを説得し、日食が始まる時間までに開けている場所に連れて行ってくれとかけあい、どれだけ日食がすばらしいか、そしてどれだけの思いで外人チームがロシアまでやってきているのか、それぞれに熱く訴え、一生懸命お願いし、時に怒って、はたまた悲しんで、数日にわたって「話し合い」が行われた。

ガイドが知らなかった詳しい時間は、フィンランド人の一人がもっていた新聞記事から、時間を割り出し、判明。見る場所に関しては、朝の数時間で一気に10数キロ歩くことになるけど、広い場所があるということで、そこに移動することになった。今回のアルタイで見れる日食は、一番センターラインに近いところでも1分半くらい。ガイドたちのいう広いところが、そのセンターラインにどれくらい近いかもわからないけど、もう今さらわかる方法はない。

日食の当日は、朝から10kgくらいの荷物を持って、ひたすら歩いた。疲れもたまっていたし、荷物も重かったけど、ただひたすらもう日食を見たい思いだけで、歩いた。皆既日食をみるために、ロシアのアルタイまでやってきて、皆既日食になる時間までに、広い場所であるところへ向かって進んでいる。できることは、みなやった。後は、天候だ。

そう、皆既日食を見る最後の条件は、お天気。こればっかりは、自分の力ではどうしようもない。どんなに条件のよい場所で、ばっちりのタイミングの時間にいたとしても、雨が降っていたら、皆既日食は見られない。けれど、今回、アルタイ山脈をトレッキングしていた数日間、雨なんて全く降らなかったどころか、毎日ものすごい晴天だった。

2008年8月1日、皆既日食当日。アルタイ山脈の空は、まぁ、ちょっと雲は出ているけど、気持ちのよい青空で雨が降る様子もなく晴れていた。

日食が近づくにつれ、不思議な風を感じる。私たちのトレッキングツアーが、日食を見るポイントである牧場に到着したのは、日食が始まる12〜3分前だった。

つづき:ユーラシア大陸の旅 #15 皆既日食 <後半>


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